にゃんこのBL徒然日記

BL:ボーイズラブ本の感想ブログ

4813012078タナトスの双子 1912 (SHYノベルズ)
和泉 桂
大洋図書 2009-12-17

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気合いの入った作品でした。
読み応えたっぷり!挿絵もステキ!
【タナトスの双子(1912,1917)/和泉桂/高階佑/SHYノベルズ(2009年)】

オススメ:

↓ネタバレあり、caution!

【あらすじ・感想など】
帝政ロシア末期。
小さな村で暮らしているユーリとミハイルは、愛らしい容姿と性格で誰からも好かれる仲のよい双子だった。
しかしある日、ふたりの前にオルロフ侯爵家の使者が現れ、平穏な日々は終わりを告げる。
双子のうち1人だけ引き取ると言う要求に反発しながらも、病気を患う母親のために離ればなれになる事を選んだふたりだが、オルロフ家に向かう途中、ミハイルは事故により行方不明に。
ミハイルの代わりにオルロフ家に引き取られたユーリ。
10数年後、近衛師団で反政府運動を取り締まるユーリの前に、亡くなったはずのミハイルが現れるのだが…。

12歳の時に離ればなれになってしまった双子・ユーリとミハイル。
ユーリはオルロフ家に引き取られて貴族になり、一方、ミハイルは事故で記憶を失い、拾われた両親の元、最下層の貧民窟・ペスキで生活をしている。
全く違う環境で生きているふたりが、13年後偶然再会。
しかし、反体制運動を取り締まる最前線に立つユーリに対し、労働者運動グループに属しているミハイル。
ユーリは相容れない立場を知りながらも、幸せな幼少期を一緒に過ごしたミハイルとの再会を喜ぶが、幼い頃の記憶を失っているミハイルは混乱していた。
そんな中、ミハイルはふたりの再会を取り持ったユーリの友人・マクシムに惹かれていくのだが…。
ユーリとミハイル、両方の視点から話が書かれているので、あらすじをまとめるのがとても難しいです。
簡単に説明すると、「相反する立場にある双子が、ひとりの男を巡って愛憎劇を繰り広げる話」ということになるかと思いますが、それだけでは説明しきれない背景もあるし、それぞれ側で支えいている男がいて、その存在もかなり重要です。
双子の話ですが、近親相姦ものではありません。
三角関係になりつつ、最終的にカップリングは別々です。
話の軸となっている双子の愛憎劇に、それぞれ別の相手との恋愛感情も同時進行していて、さらに混迷する帝政ロシアの政情や、労働者運動の状況が関わっているので、少々話が込み入っています。
その辺りの心情変化が繊細なので説明が難しい…。
ミハイルは記憶を失っているし、運動への参加もそこまで深入りしているわけではないので、マクシムの事がなければこじれることはなかったのかもしれません。
でも、ユーリは幼い頃の記憶があるだけに辛い立場なんですよ。
決してユーリも恵まれた環境にはないのですが、ペスキで暮らすミハイルよりは経済的にも社会的にも恵まれた立場にある。
それ故にユーリはミハイルに負い目を感じているし、逆に、ユーリはミハイルの好意を素直に受け入れられない気持ちがどうしても出て来てしまう。
ミハイルはユーリが得られなかった家族愛を得ているけれど、それは一見して分かるものではないですもんね…。
その微妙な気持ちのすれ違いに、マクシムという、当て馬と言うよりは王子様的な人物が入り込んだために益々ふたりの関係は複雑になってしまいます。
前半の「1912」は、この三角関係が崩壊するまでの話。

その3人の話が進んでいる間、それぞれの本命馬は脇に控えて今か今かと出番を待ち続けています。
気付いたらここまで名前を出していませんでしたね…。
ユーリの相手がヴィクトール、ミハイルの相手がアンドレイ。
ヴィクトールはユーリより年上ですが、立場はユーリの部下。
軽蔑したような態度を取りながらも、目的のためにと自分に従っているヴィクトールをユーリは理解でいないままでいます。
このふたりの関係は清澗寺家の次男と深沢みたいな雰囲気ですね。
ユーリは次男より潔癖で精神的にもしっかりしていますが。
一方のミハイルとアンドレイは幼馴染みで、アンドレイがミハイルに片思いしているような状況。
恋愛まであと一歩という感じだけど、まだミハイルの気持ちが恋愛感情じゃないとアンドレイが感じているから、真剣なアンドレイは距離を置いています。
健気だ…。
この中でアンドレイが1番純粋な恋愛をしているような気がします。
1番影が薄いんですけどね(笑)
「1917」は、ユーリとヴィクトールの関係を中心に話が進んでいます。
幼い頃の記憶がないからこそ愛を選ぶことができたミハイルに対して、記憶があるユーリはどちらも選びきる事が出来ず、その結果自分を犠牲にするしかなかった。
そのどん底から、ヴィクトールによってユーリは這い上がります。
でも…再びユーリは岐路に立たされてしまう。
そこでユーリがどの道を選択したのか…?
結末は読んで確かめてください。
ネタバレになってしまうので詳細は書きませんが、私はしばらく最後のページから動けませんでした。

ということで、和泉先生の新刊は気合いの入った2冊でした。
大筋は愛憎渦巻くメロドラマなんですが、舞台が1900年代の帝政ロシア、登場人物が皆ロシア人で、政治的な話が盛り込まれているので、読み応えたっぷりです。
誰よりも心を分け合っていた双子のお互いに対する無条件の愛と、近い存在だからこそ生まれる憎しみは紙一重。
その微妙なバランスがどちらに傾くのかという所に、それぞれの立場や社会情勢などが関わってくるので、そこを読み飛ばすと話が理解しにくいかもしれません。
個人的には、こういった堅い話や愛憎劇は好物なので面白かったです!
ただ、内容盛り沢山なので、2段組みで2冊という大ボリュームでも入りきっていないように感じてしまうのが残念。
双子の話ですが、全体としてはユーリが主人公なので、いっそユーリ側に絞って話を進めてもよかったのではないかな?
それか、ユーリとミハイル、同時進行ではなく、両視点で1冊ずつにするとか。
あと、好みの問題もあるとは思いますが、人間関係にばかり気持ちが入ってしまって、萌えに至る余裕がなかったです。
濡れ場はミハイルも含め何度もあるし、後半のユーリとヴィクトールの場面は確かに美味しいんですが…。
うーん、大興奮!とまではいかないのが残念。
しかし、兎にも角にも、マクシムを絡めてユーリとミハイル、ユーリとヴィクトール、ミハイルとアンドレイ、複数の愛憎劇が交錯しているのがこの話のポイントだと思います。
それに関しては充分面白い!と感じたし、ラストの展開も私は好きです。
萌えがあれば更に興奮度は高くなったと思いますが、和泉先生の気合いが存分に感じられて、読み応えのある作品でした!
高階先生の挿絵もステキです♪

4813012086タナトスの双子 1917 (SHYノベルズ)
和泉 桂
大洋図書 2009-12-17

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2010.01.06 01:20 | 和泉桂 | trackback(1) | comment(2)
            

にゃんこさん、こんばんは。
こちらではお久しぶりです~。

この本、歴史物だし外国が舞台だし、登場人物が全員外国人ということでなかなかハードルが高いかと思ったんですけど、意外とすんなり読めたな~というのが第一印象でした。
もちろん、登場人物達の愛憎劇の行方があっちいったりこっちいったりで、ど、どうなるの!?ってヒヤヒヤしたりはしたけど、作品じたいは、あんまりテンションの高いものじゃなかったですね。
歴史書みたい…な感じなのかな? 心理描写も過剰さがなくて、場面転換とかでもわりと説明が省かれたり、みたいなのは、フィクションよりはノンフィクションを提供する感じに似てたのかも…と思いました。
他の方が言われてたんですけど、5冊くらいかけて各人の心理描写までねっちりみっちり書き込んでくれたら、間違いなく傑作だったと思います。

ラストシーンの解釈は、どうとったらいいんだろう…。個人的にはこういう終わり方は嫌いじゃないのですが、今のBLでこのラストは、和泉さんも相当悩まれたんじゃないかなあと思います。
私も、最初は放心しました。「……えっ?」って(笑)
でも、この話はこの終わり方でよかったと思ってます。

にゃんこさんのいう萌えは、エロ方面ですか?(笑)
私は、記憶喪失設定そのものが萌えなので、金髪碧眼、軍服、双子、記憶喪失、萌えでいっぱいでした。
高階さんのイラストが本当にうつくしくて、素敵な作品でした~。

長々失礼しました。TBさせていただきました。

最後に。今年も宜しくお願いします!

2010.01.07 22:22 URL | 秋月 #3VVjZltY [ 編集 ]

秋月さん、こんにちは!
別の場所で毎日出会っているから久しぶりな気がしないね(笑)
昨年もお世話になりました。
今年もよろしくお願いします!

>意外とすんなり読めたな~というのが第一印象
確かに、思ったより読みやすかったです。
事前に和泉先生が心配されていたのでどんな感じなんだろうとちょっとドキドキしながら読み始めたけれど、個人的には「紅楼の夜に罪を咬む」より理解しやすかった。
愛憎劇ではあるけれど、秋月さんの言うようにそこまでテンションの高くないし、ドロドロした感情が控えめでしたね。
私も、冊数を増やしてもっと心理描写をネットリと書き込んでくれたら、さらに読み応えのある作品になっていただろうなと思います。
この冊数でこの時代背景とふたりの感情を収めるのは難しい!

ラストは…今のBLではなかなかない、というより、出来ない展開でしたね。
話が重厚なだけに、こうするしか話が収拾しない。
賛否両論あろうかと思いますが、私はこれはこれでいいんじゃないかなと思いました。

>にゃんこさんのいう萌えは、エロ方面ですか?(笑)
そ、そんなこと…ないとは言えないですが、それがすべてじゃないですよ!
自分でもよく分からないのですが、SMとか直接エロに繋がる萌えもありますが、例えば近親相姦とかヘタレ攻とか、直接繋がらない萌え要素もあります。
ただ、萌えが収束してテンションが1番上がるのが濡れ場だったりするので、萌え=エロの印象が強いのではないかと…。
萌えエロになるにはそこまでの設定とか過程も重要ですし。
でもまぁ、エロ方面が好きなのは間違いないです(笑)
あ、因みにもしこれが双子の近親相姦モノだったら激萌えの可能性大でした!

コメント&TBありがとうございました!
今年もまた感想談義が出来ると嬉しいです(*´ェ`*)
それではまた~

2010.01.10 15:39 URL | にゃんこ #fwkSvwQ6 [ 編集 ]













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