にゃんこのBL徒然日記

BL:ボーイズラブ本の感想ブログ

明日も愛してる :安芸まくら

4883863549明日も愛してる (Holly NOVELS)
安芸まくら
蒼竜社 2008-08-04

by G-Tools

切なくて泣ける。
濃厚すぎて体力消耗しました…。
【明日も愛してる/安芸まくら/深井結己/Hollyノベルズ(2008年)】

オススメ:

↓ネタバレあり、caution!

【あらすじ・感想など】
ある朝、見知らぬ部屋のベッド目覚めた櫂。
17歳だった自分が35歳になっていて、目の前にあるファイルには自分の筆跡で「前向性健忘で13分しか記憶を保てない」事が記されていた。
戸惑う櫂の前に現れたハウスキーパーのツダは親切だが、櫂は何故か落ち着かなくて…。

記憶障害というと記憶喪失がすぐに思い浮かびますが、今回の記憶障害は新しいことを覚えられない「前向性健忘」が題材になっています。
櫂の場合、5年前に遭った事故によって、事故以前の過去の記憶(何歳なのかは日によって違う)と13分間の現在の記憶しかない状態。
常に大切なことはメモを取って目の前のことを忘れないようにしていても、1回睡眠を取るとすべて振り出しに戻ってしまうわけです。
当然津田が恋人であることも忘れてしまうけれど、津田はそんな櫂と一緒に暮らしながら世話をしています。
記憶のない相手に自分が恋人であることを認識させるのは簡単ではないし、男女ならまだしも、男同士である事はかなりハードル高いですよね。
毎日記憶がリセットされてしまう櫂への想いは、どれだけ注いでも通り抜けてしまって、櫂の心に留まらない。
それでも一緒にいる事を望み、愛を与え続ける津田の想いの深さに心を打たれます。

このノベルズ一冊の中に書かれているのは、そんな二人の1日です。
ずっと櫂視点なので、何度も何度も津田を忘れ、関係を再構築していく過程がひたすら続きます。
読んでいて正直疲れましたが、こんな私以上に津田は疲れるんだろうなぁと思うと、津田がいかに根気よく櫂の世話をしているのかということがよく分かる。
愛あればこその献身なんでしょうけど、これが延々と毎日続くのかと思うと、私は想像だけでぐったりしちゃいますよ。
そもそも、自分が忘れられてしまうなんて、仕方がないと分かっていてもとても悲しい事ですよね。
櫂の妹・藍も津田と同じように櫂を見守っているんですが、その藍でさえ頭で理解していても、実際に直面するとショックを受けています。
でも、家族として過去の記憶に残っている藍はまだしも、津田は存在自体が櫂の記憶から消えていることがあるのです。
津田の心の痛みは計り知れないけれど、それでも津田は櫂と共に生きることを選択してる。
櫂の記憶の方向性によって心理状態が変わり、ベクトルが変わる。
そのベクトルの向きを津田は感じ取って合わせ、櫂が混乱しないように導いていく。
もちろん、津田が望む方向に櫂を誘導することもあって、エッチになだれ込んだりもするんですけどねw
ここまで、一体どれだけの苦労があったんだろうか…。
津田がこの境地に達するまで、相当苦しんだんだろうなぁ。

一方の櫂は、日々障害に翻弄され続けています。
櫂は常に混乱したり、落ち着いているときには記憶することに集中していたりしなければならないから、活動している脳はフル回転なんじゃないだろうか…。
記憶が消えていくというのはどんな感覚なのか、想像しても正確に理解することができませんが、幸せな気持ちをとどめておけないのは寂しいですね。
津田も大変ですが、一番多くのものを失って苦しんでいるのはもちろん櫂自身。
時々意識がハッキリとして、自分の置かれた状況を正確に掴める時間が櫂にはあるのだけれど、それは辛い現実を目の当たりにするという事でもある。
でも、津田が隣にいるからこそ、その瞬間が幸せと思えるんでしょうね。
櫂の強さが伝わってきました。

人との出会いは一期一会だし、変わらないものなんて何もないのだから、過去にしがみつかず、今を生きていくという事は大切なのだと思います。
でも、それは過去を土台にした未来があるからそう思うのであって、土台となる過去の記憶がなかったら、一体何を頼りにしたら良いんだろうか。
記憶喪失ならば再び土台を固めればいいのかも知れないけれど、櫂の障害はさらさらの砂で土台を作るようなもの。
それでも、そんな毎日の積み重ねでほんの僅かでも土台がそこに出来、少しずつ変化していく。
それを感じさせられるラストがよかった。


ということで、ホリーノベルズ初の非木原ノベルズだったこの作品。
最初手に取ったときは、所々にあった手書きの文字に得も言われぬ不安を感じたのですが(…)、読んでみると恐ろしく深くて濃い作品でした。
一冊の中に起承転結があるのではなく、起承転結が短いスパンで繰り返されているので、驚くほど密度が高い。
繰り返される二人の恋を少しだけ垣間見ているだけで、二人が過去にどんな出会いをして、どんな関係を築いていたのかには触れていません。
なのにこの重量感は一体何?!
流石はホリーノベルズ。
木原作品同様、一筋縄ではいかないなぁ。
しかし正直な所、櫂の視点で何度も記憶がリセットされてしまうため単調に感じてしまい、私は何度も途中で寝落ちしてしまいました…。
そんな事もありモヤモヤした読後感だったのですが、感想を書き始めたら思いがけず言葉が浮かんできて、なにコレかなりいい話?と思い始めている自分に吃驚。
いや、別に改めて思わなくても、これはいい話だったのだろうけど…。
読み返してみると、切ないけれど溢れる愛を感じ、胸がいっぱいになりました。
ただ、「楽しいか」と言われるとまた別の話なんですよねぇ。
私は読んでいて疲れました。
楽しさを求める作品ではない事は分かっていますが…。
永遠に繰り返す二人の恋愛を垣間見るには、こちらもパワーが必要という事かな。
あわゎ…うだうだ書いちゃいましたが、私のように感じる人もいるだろうし、最後に大円満という話ではないので、好みは別れるかもしれません。
私は後からジワジワきて泣かされましたよ…。
読み応えのある、切なくて甘い作品を読みたい方は是非どうぞ!
2008.08.09 09:53 | 安芸まくら | trackback(3) | comment(4)
            

にゃんこさん、こんにちはー。

この作品、物凄い恐ろしくて深い、力をもった作品だったよねー。
その設定からして一筋縄ではいかないと思っていたけど、読んだらその力に圧倒されてしまった。
でも、最初は普通にほかの人たちが感じただろう「ジワジワきて泣かされる」感覚だったのに、どこでその悪魔にとりつかれたのか、すごく穿った見方をしてしまって、一人で「この作品は怖い…!」と思ってしまったよ。
でもやっぱり、「永遠に繰り返され続ける愛」の凄さがメーンなんだよね、きっと。

愛あればこそなんだろうけど、私もここまでの献身は捧げられないだろうなあ…。
一日の休みもなく(津田は3日家をあけたと言っていたので365日毎日ではないかもしれないが)、この先ずっと…?
愛よりも贖罪のため、と言い切られたほうがよっぽど納得してしまう、そんな私は愛に薄情なんだろうか(笑)

とにもかくにも物凄い作品だった。私は読んでよかったな♪

TBいただいていくね、超ひさしぶりでドキドキする(笑)

2008.08.09 13:04 URL | 秋月 #- [ 編集 ]

秋月さん、ここではお久しぶりですw

いやぁ、濃かったですね。
なんとか感想をまとめようと努力したけど、私の読解力と想像力、語彙力ではこりゃムリだ!と、なんだか別の意味で敗北感を覚えたよ…(^_^;)

>そんな私は愛に薄情なんだろうか(笑)
私もムリですよ…。
でも実際にそんな状況に陥ったら、そう簡単に去れないと思うけど。
世話をしながらも、矛盾した気持ちを抱える自分に苛立ちそう。

今後も安芸先生はホリーで出すのかな?
怯えながらも結局読んでしまいそう(笑)

コメント&TBありがとうございます~。
ではでは!

2008.08.10 18:28 URL | にゃんこ #fwkSvwQ6 [ 編集 ]

にゃんこさん、お久しぶりです。
この本、発売されてすぐ読んだのに、今ごろ感想書いてみました。
二人とも哀しいのに、読後感は暖かいんだよね。

どちらに感情移入するか、読み手によって受け取り方は変わるものだけど、このお話は特にはっきりでるみたいで、それも面白いですね。
私は感想を書く時点になって、すっかり津田くんになってしまいました。読書中は櫂くん哀れ…だったのに…。
こんな状態でも愛し続けられるのか、これは執着ってヤツでわっ…とか、なにやら妙に考えさせられちゃったわ。

TBさせてくださいね。
(しょっちゅうネット落ちしているからやり方、忘れてないかなe-263)

2009.04.28 14:39 URL | すみか #RUYTVyYs [ 編集 ]

すみかさん、こんばんは!
レス遅くなってすみませんi-201

感想を書き始めると、読んでいるときと印象が変わってくる事ってありますよね。
読み終わって振り返ってみると、最初は見えていなかった所が見えてきたりします。

>こんな状態でも愛し続けられるのか、これは執着ってヤツでわっ…
うーん、判断できない…(^_^;)
愛があるから執着したんでしょうが、途中からはもう分からないですよね。
私は読んでいて、「その感情が何でもいいから、とにかくふたりで幸せになってくれたらいいですよ!」という気持ちになってきました…。

コメントありがとうございました!
TBも無事受け取れています~♪
こちらからも遊びに行かせていただきますね。ではでは!

2009.05.01 00:56 URL | にゃんこ #fwkSvwQ6 [ 編集 ]













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