にゃんこのBL徒然日記

BL:ボーイズラブ本の感想ブログ

海に眠る :葛城ちか

4537141050海に眠る (KAREN文庫 Mシリーズ)
葛城 ちか
日本文芸社 2007-10

by G-Tools

新人さんだと思って読んだら…とってもJUNEでした。
流石Mシリーズ。
挿絵も雰囲気に合っていて、大満足。
【海に眠る/葛城ちか/えすとえむ/KAREN文庫(2007年)】

オススメ:

↓ネタバレあり、caution!!

【あらすじ・感想など】
表題作含め、短編3話収録。
『海に眠る』
渋谷の公衆トイレに捨てられ、孤児院で育った渋谷(16歳・攻)。
幼い頃から性的虐待を受けていたは、孤児院を去る際、自分を踏みつけていた大人を殺害し逃げる。
そして辿り着いたある海辺の街で、は井辻祐介(26歳・受)に出会った。
祐介が義父と身体の関係があることに気が付いたは、祐介に欲情しレイプするが、祐介はそんなに「ここにいろ」と言う。
同じ孤児院にいたことがあり、が幼かった頃世話をしていたのだという祐介。
何事に対しても心が動かなかっただが、祐介と共に過ごし、祐介と義父との関係を知っていくことで、今まで知らなかった感情が芽生えるのだが…。

祐介と義父・井辻との関係は閉鎖的です。
幼い頃から心臓が弱かった祐介は、被験者として製薬会社の研究者であった井辻と出会います。
祐介に惹かれた井辻は、祐介を孤児院から引き取り、肉体関係を持つように。
そして祐介もまた、井辻の愛に応えます。
しかし、既婚者であり、社会的地位の高い井辻が祐介と一緒に暮らすことは次第に難しくなり、祐介は夏の間、この海辺の街で暮らすことに。
こうして距離が離れたことで、二人の関係も少しずつ変わっていく。
そんな状況の中現れたに対し、祐介は一緒に暮らすよう求めます。
この生活の中で、今まで押さえつけられ眠っていた人間らしい感情がの中で目覚めていきますが、犯した罪は重く、幸せな時間は終わりを迎えることになるのでした。

重いです。
あらすじ読んだだけですぐに分かると思いますが、この二人に「未来のある結末」は訪れません。
二人にとっては「幸せな結末」なのかもしれませんが…。
明るいハッピーエンドじゃないとイヤだという方は読まない方が賢明だと思います。

ではネタバレ含めた感想を…。ご注意くださいませ。

も祐介も井辻も、人を愛してしまったことで苦しみ、身動きできなくなっています。
は祐介と出会ったことで愛を知りますが、祐介と幸せになりたいと願っても、犯した罪は重く、祐介と共に生きることはできない。
祐介はを愛しても、井辻切り捨てる事が出来ない。
井辻は祐介を愛していますが、幸せにすることができない。
も井辻も祐介を愛していますが、二人とも入り口を間違えているので、幸せな出口を見つけることができません。
祐介がに「何故人が人を殺してはいけないのか」を説くシーンが印象的でした。
の身の上に同情はしても、罪は罪だと告げる祐介。
「人を殺した君に、神は間違いなく、罰を与えるよ…」
祐介のその言葉が重い。
神を信じ、人の死についてしっかりと自分の考えを持っているのは、祐介が「死」を身近に感じているからでしょう。
そして、だからこそや井辻を受け入れる優しさ、包容力がある。
でもそんな祐介でも、「死」に対する恐怖がないわけでは決してなく、最期にを選ぶことになります。
誰が悪いとも言い切れないこの状況、やりきれない気持ちになりますね…。

それにしても、の行動が少々常軌を逸していて怖いです。
遺体と共に、一体どれだけの時間過ごしたんでしょうか。
確実に腐敗が進んでいますよね…。
死姦に出会うは初体験デスヨ。(「獣」にあった…かも?)
そう簡単に出会えるプレイではないので、貴重ですね(え?)
生きている間にも絡みは何度かあって、激しかったり、甘かったり、悲しかったり、いろんな感情が一緒になっていて、エロいけど切ない。
そこに萌えます。

ラストが衝撃的でした。
まさかそっちに転がるとは…!
愛に飢えていた二人がようやく手に入れることができた安らかな未来…だと思えば、それはある意味ハッピーエンドなのかもしれません。

おやすみ。
おやすみ…祐介。



泣ける。

『思い出させてあげよう』
僕は水上涼。
幽霊である僕は、仏間の押し入れをベッドルームにしている。
双子の弟・凪を愛するあまり成仏できなかった僕は、凪を16年間見守ってきた。
でも、そんな凪が突然家出し、友人の高石のアパートにいると知り…。

『海に眠る』から一転して、一人称でコミカルな雰囲気の話です。
幽霊となって愛する凪を見守っている涼ですが、その声が伝わることは決してない。
そんな状況を受け入れてはいたけれど、凪と高石が好き合っている事を知り、さらに凪の悩みを知って衝撃を受けます。

近親相姦モノ…と言っていいのか微妙ですね…。
涼は幽霊なので、気持ちは届いても恋愛関係には至りません。
まあ、涼の気持ちは恋愛感情に近い肉親愛なのかなぁと思いますが。
涼の視点で話が進むので、凪と高石の絡みの場面は、なんだか覗きをしてるようで(状況的には覗きで間違ってないんですが)ドキドキします。

にしても、この二人の祖母って酷くないですか?
生まれたときのことについて云々言われても…ねぇ。
少なくとも凪のせいではないだろう、それは。

『さよならは言わない』
啓人(24歳・攻)の前から恋人の有羽(27歳・受)が姿を消して一週間。
海外赴任する自分に付いてきて欲しいと迫っていたのが悪かったのか?
それとも何か他の理由があるのか?
悩む啓人だが…。

思いがけずかなり重い話でした。
話の流れから、もしかしてエイズ…?と不安になっていたのですが、そこまでじゃなかったですね。近いけど。
HIVじゃなくてHCV。
そして、この話はさらに先がありました。
そっちの方が「死」に直結していて衝撃でしたよ…。
重いけど、ラストは明るく、前向きだったのでホッとしました。
…最後のシーン、あれはちゃんと先があるんですよね?
まさか眠ったままとか言わないですよね?
流れ的に怖いんですが…。
そんなすぐにどうこうなる状態じゃない…ハズ。

でも、有羽。
「理由もなくコンドームをつけてくれなんて言えないじゃないか」って…。
いやー、それは言ってもいいと思うんだ。
セーフセックスを心がけようよ。(BLではそんな概念なさそうだけど…)

--
ということで、3話とも雰囲気が違う作品でしたが、どれもJUNEのニオイが漂ってましたね。
特に表題作『海に眠る』はまさにJUNE。
ラストもそうだけど、全体的に閉塞感漂っていて、「死」を絡めて耽美な作品に仕上がっています。
「新人」と書いてあり、「KAREN文庫Mシリーズって復刊だけじゃないんだー」と思いながら読み始めたのでちょっと驚いてしまいました。
よくよく見ると、「新人」さんですが初出が1996年~2000年の小説イマージュクラブ。
だから最近の作風ではないのですね。納得。
今だったらこのプロットは通らないだろうなぁ…。
木原先生だったらこの手の話を書きそうな気がするけど、木原先生が書いたら、もっと人間のエゴが全面に押し出された作品になりそうですね。

甘い恋愛の話ではありませんが、重くて切なくて泣ける。
こんなシリアスな作品が私は好きなので、久しぶりにドップリJUNEな作品に出会えてとても嬉しいです。
でも、葛城先生の作品が今後新たに出てくることは…なさそうですよねぇ…。
それがとても残念。
どれだけ需要があるのか私には把握できませんが、マニアックな路線を突き進んでいるこのMシリーズ、ステキです。
こうして埋もれている良作は沢山あると思うので、今後も発掘して欲しいです!
えすとえむさんの挿絵も雰囲気に合っていて、大満足。
2007.10.29 00:32 | 葛城ちか | trackback(1) | comment(2)
            

にゃんこさん、こんばんは!

流石のKAREN文庫と言いましょうか、この作品も読み応えがありましたね。

3作全てが、人間の生死に関わる設定と言う重さもありますが、共通する設定を踏まえつつも、夫々に個性が感じられる仕上がりで興味深かったです。

3作目を読んでいる時には、私も木原先生を連想しましたが(「リベット」ではHIVやエイズが取り上げられていますし)、

>「理由もなくコンドームをつけてくれなんて言えないじゃないか」

ここの台詞は感慨深いものがありました。避妊目的と言う部分だけではなく、病気の予防、と言う事が大きく取り上げられるようになったのって、比較的最近の事ですしね。

この作品が初出された頃は、今よりはHIV等の病気の世間的な認知度も低かったと思うのですよ。些細な事かも知れませんが、とても「時代性」が感じられる台詞だと思いました。

他にもちいさな所を上げればキリがない程に、面白いと感じる部分も多く、とても読み応えを感じる一冊で嬉しかったです。

葛城さんは寡作の作家さんのようで、新作が読めない事が残念ですね。

ではでは、TBお返しさせて下さいまし!

2007.10.30 17:51 URL | ハスイ #MMIYU.WA [ 編集 ]

ハスイさん、こんにちは!

さすがのKAREN文庫でしたね。
どっしりJUNEでした。

>この作品が初出された頃は、今よりはHIV等の病気の世間的な認知度も低かったと思うのですよ。
そうですね、私はすっかり頭から抜けていましたが、この短編が雑誌に掲載されたのが10年ほど前なので、そんな背景があるからこそのセリフなんでしょうね。
ハスイさんのコメントでハッとしました。

野村さんの「テイク・ラブ」でもそうですが、昔の作品はこうした「死」を扱った話が結構あったように思います。
それが美しいかどうかは賛否の分かれるところかもしれませんが、私はこの余韻が好きです。

TB&コメント、ありがとうございました。
それではまた!

2007.10.31 12:01 URL | にゃんこ #fwkSvwQ6 [ 編集 ]













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海に眠る
【内容紹介】公衆トイレの片隅に、へその緒をつけたままで捨てられていたリュウは、虐待に耐えかねて孤児院の牧師を虐殺し、逃亡する。親の愛さえ知らず、あまりにも孤独で、十六年のリュウの人生は暗闇も同然

2007.10.30 17:25 | +synapse∞type-bee+

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