にゃんこのBL徒然日記

BL:ボーイズラブ本の感想ブログ

箱の中 :木原音瀬

4883862925箱の中 (Holly Novels)
木原音瀬
蒼竜社 2006-03-23

by G-Tools

今頃…ですが、やっぱり2006年の内に読んでおかなければと思い手に取りました。
文句なしに面白かったです。
【箱の中/木原音瀬/草間さかえ/Hollyノベルズ(2006年)】

オススメ:

↓ネタバレあり、caution!!
堂野崇文は痴漢と間違われて逮捕されるが、冤罪を訴え最高裁まで争ったため、実刑判決を受けてしまう。入れられた雑居房は、喜多川圭や芝、柿崎、三橋といった殺人や詐欺を犯した癖のある男たちと一緒で、堂野にはとうてい馴染めなかった。そんな中、「自分も冤罪だ」という三橋に堂野は心を開くようになるが…。


【あらすじ・感想など】
堂野崇文(30歳・受)は、普通に生きてきた普通の公務員だった。
しかし、ある日満員電車で痴漢に間違われ、無実を訴えたために最高裁で実刑が確定、10ヶ月の間刑務所で過ごすことになってしまった。
何も悪いことはしていないはずなのに何故。
割り切れない思いで刑務所での生活を送っていた堂野は、周りにとけ込めずにいた。
そんな堂野に、同じ房の三橋は「自分も冤罪なんだ」と告げられ親しくなったが、先に出所した三橋は堂野の親から金を騙し取っていた。
信用した人間にも裏切られ、精神的に追いつめられていった堂野は「死にたい」と思うようになっていく。
そんな堂野の心を癒したのは、同じ房だがいつも無口な喜多川圭(28歳・攻)の優しさだった。
堂野は喜多川の感情の乏しさに目が離せなくなり、喜多川は堂野に懐いていくが…。

私、刑務所モノっていうとどうしても「終わりのないラブソング」が真っ先に頭に浮かんでしまいます。
正確に言うと少年院モノなのでちょっと違いますけど、暴力と男の性にまみれた怖いところという印象なんですよね(苦笑)
英田先生の「DEADROCK」もそっち系ですね。
でも、この作品はそういった場ではなかったので、ホッとしました。
比較的短期刑の人が多い刑務所って言うのもあるのでしょうが、厳しい規律に縛られてはいるけれど、無意味に殴られたり犯されたりするような状況ではないですからね。
とはいっても、堂野のような立場であればもちろん苦しい場なんですが。

堂野が刑務所で生活している時の話が『箱の中』で、堂野視点。
喜多川が異常とも思えるような執着で堂野を求めますが、最後は堂野の出所によって二人の仲は絶たれます。
堂野としては、喜多川に対する自分の気持ちを恋愛感情ではなく人間愛的なものだと位置づけているので、肉体関係を持ちたいとは思ってません。
キスをしたり手をつないだり、そういったスキンシップによって癒されているのも確かなのですが。
喜多川の気持ちに流されているだけだと思っていたい。
それに対して、喜多川の気持ちはシンプル。
「好き」だから「触りたい」「セックスしたい」
幼い頃から親にも愛されず、まともな生活を送ることができなかった喜多川は、いろんな感情を知りません。精神年齢がとても低い。
だから堂野に対する思いは駆け引きとか一切なくて、一直線なんですよね。
それを受け止めきれない堂野のラストの行動は間違ってはいないし、しょうがないかなと。
もしこの時点で受け入れようとしたなら、二人ともダメになっていたんじゃないかな。
続編があるというのが分かってて読んでいるからそこまで暗い気持ちにはならないですけど、これで話が終わっていたらかなり切ない。
続きがあってよかった…。
喜多川が救われて欲しい。

喜多川の出所後の話が『脆弱な詐欺師』で、探偵の大江視点。
堂野のことを忘れられない喜多川は、出所後働きながらも堂野を探し続けます。
でも堂野の情報が少なすぎて、いろんな探偵事務所に依頼するが毎回失敗。
出所後5年経った頃、大江の探偵事務所に依頼にきますが、大江は金を騙し取ろうと個人的に仕事を請け負います。
しかし、それは芝という、喜多川の同僚であり刑務所時代からの知り合いである男に見つかってしまい、脅された大江は本気で堂野を探す羽目に。
そんな大江の死にものぐるいの捜索の結果、堂野の居場所が明らかになりますが…。

大江の視点で出所後の喜多川の姿が描かれます。
喜多川は働き始めたこともあってか、刑務所にいた頃より常識人になっている気がする。
とは言っても、やっぱりちょっと変わってますけどね。
堂野への執着は度を超えてますが、堂野と出会わなかったら、喜多川は出所後も生きる目的もなく淡々と生きて、そのうちまた犯罪を犯してしまってたんだろうな。
今まで何の意味も持たせてもらえなかった喜多川の人生が、幸せに繋がるかどうかはまだ分からないけれども、堂野によって意味のあるものになったのは間違いない訳で。
続きを読まなきゃ、こっちもすっきりできませんね。
ということで、明日の続編に続きます。

それにしても、この『脆弱な詐欺師』は別の意味で痛い。
大江は別に特別悪人ではない、むしろ普通のオヤジなんですけどね…。
ちょっとしたきっかけでこうやって墜ちていってしまって、本人はそれを受け入れられず藻掻いてる。
おまけのショート『それから、のちの…』で更に痛い。
うーん、怖いなぁ。
木原先生は初読みなのですが、“痛い作家さん”という噂は結構聞いていたので、ちょっとビビりながら読んでました。
この『脆弱な詐欺師』のような、人間の弱さとかエゴとかそういったタイプの痛さなんでしょうか。
他を読んでみないと何とも言えませんが。

この本に関して言えばBLっぽくない雰囲気でした。
絡みも余りないし。
改めて考えると、結局この本では愛のあるエッチはなかった。
でもそんなこと忘れるくらい中身も濃かったし、面白かったです。

■続編
「檻の外」
関連記事
2006.12.04 10:01 | 木原音瀬 | trackback(2) | comment(4)
            

にゃんこさん、こんにちは。
木原さん、初読みだったんですね。確かに世間では痛い作家さんと言われていますが、人間のエゴや醜さをつきつけてくるので、なんというか心が痛む感じかなと思います。
最近の話ではそれほどでもないのですが、昔の作品は本当になんとも「嫌な奴」が出てくるものでした。それと、攻が受に過剰に執着するのも特徴です。
私にとっても、今年、読んでおいてよかった作品の一つです。
後編の感想も楽しみにしていますね。
TBさせていただきました。

2006.12.04 11:06 URL | 秋月 #3VVjZltY [ 編集 ]

秋月さん、こんにちは。

木原先生の評判は前々から知っていたのですが、精神的に痛そうでビビってしまい(今更ですが)、なかなか手を出せずにいました。
でも、この作品は絶対今年中に読まなければ~と思い、ようやく読んだ次第です。
>人間のエゴや醜さをつきつけてくるので
やはりそこなんですね。
肉体的な痛さは気負い無く読めるんですけど、精神的に痛いのは気合いと心の準備が必要です。小心者なので(笑)
でも、続編共々すごく面白かったので、また木原作品を手に取ってみようと思ってます。

こちらからも伺わせて頂きますね。
それでは~

2006.12.04 13:35 URL | にゃんこ #fwkSvwQ6 [ 編集 ]

にゃんこさん、今日は。

「箱の中」と「檻の外」は、私にとっても印象の強い作品となりました。

「理解をしているけれども、できれば目を背けたい」。そんな人間の本質を抉る描写が多く、読んでいて辛い思いをする事もあるのですが、作品中でのキャラクターがしっかりと「生きている」と感じさせてくれるこの作品は、「BL」と言う枠を超えて、「小説として価値を持つ」作品だと思います。

色々と暑苦しい感想になってしまうのでこの辺りで切る事にしますが、「檻の外」の感想も楽しみにさせて頂きますね。

TBさせて頂きました!

2006.12.04 14:29 URL | ハスイ #MMIYU.WA [ 編集 ]

ハスイさん、こんにちは。

この作品、もうすでに皆さんが絶賛されているので、読む前からかなり期待してしまってました。
そういった時は大概期待が大きすぎて「あれ?」という結果に終わるのですが、この作品は「さすが!」と唸ってしまいました。
ハスイさんのおっしゃるとおり、直視したくない人間の弱さとか狡さとか、そういった部分を木原先生は抉ってくるので痛いです。

<「BL」と言う枠を超えて、「小説として価値を持つ」作品だと思います。
そうですね。「BL」と言うジャンルに括ってしまうには惜しい作品ですね。
腐女子以外が読んでも、しっかり楽しめる作品だと思います。

TB&コメントありがとうございました。
また「檻の外」でお世話になります~。

2006.12.04 17:35 URL | にゃんこ #fwkSvwQ6 [ 編集 ]













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『箱の中』
箱の中 木原音瀬/草間さかえ  蒼竜社ホリーノベルズ 2006.03刑務所という「箱の中」が舞台となるこのお話は、痴漢冤罪によって実刑判決を受け、雑居房に収容されてしまった堂野崇文の不運を描く。ある朝、満員電車に乗ったがために痴漢と間違われて逮捕されてしまった

2006.12.04 10:58 | 月と凌霄花

箱の中
箱の中木原 音瀬 (2006/03/23)蒼竜社 この商品の詳細を見る【内容紹介】堂野崇文は痴漢と間違われて逮捕されるが、冤罪を訴え最高裁まで争ったため、実刑判決を受けてしまう。入れられた雑居房は、喜多川圭や芝、柿崎、三

2006.12.04 14:19 | +synapse∞type-bee+

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