にゃんこのBL徒然日記

BL:ボーイズラブ本の感想ブログ

4044327017M(エム) この世で一番最後の夜 (角川文庫―スニーカー文庫)
三田 菱子
角川書店 1990-06

by G-Tools

【JUNE再読】
三田先生と言えば、「鼓ヶ淵」の方が有名でしょうか?
もちろんそちらも名作ですが、個人的にはこの作品を先に読んで印象的だったので、今回はこちらを再読。
この退廃的で湿度の高い雰囲気。
現代の日本、東京を舞台にしているにもかかわらず、非日常的で閉鎖的な舞台設定。
まさにJUNE。
短編ですが、濃厚で話に惹き込まれました。
いのまたむつみ先生のイラストが、さらに雰囲気を盛り上げてます。
【M この世で一番最後の夜/三田菱子/いのまたむつみ/ルビー文庫(1990年)】

オススメ:

↓ネタバレあり、caution!!
M。赤坂にある、偏光ガラスと石の黒い鏡のような外壁の15階建てのこのビルは、実はありとあらゆる歓楽の館だった。オーナーは16歳のレイ。長い髪と透けるような白い肌を持った少年だ。レイともう一人の美しい少年裕の出逢いが、彼らの運命を変えた―。ひそやかに、ひめやかに、Mを舞台に繰り広げられる禁断の恋。甘く、切ない、男と男の妖しいラブ・ロマンス。


16歳のレイは、ありとあらゆる歓楽を集めたビル・Mのオーナー。
叔父の茉莉亜と共に暮らすレイは、夜は少女の姿になり、Mを仕切っている。
ある日、レイは裕に出会ったことから、ある計画が実行される。
裕は、レイと茉莉亜の目的にぴったりの少年だったのだ。
裕とレイは親しくなり、裕はMでアルバイトをするようになる。
客の一人、沢垣は裕を見て衝撃を受けるが…。

これだけの文章では、全然内容が見えてきませんね…。
すいません、どこまでどう説明したらよいのか分かりません…。
最後の最後にオチ(?)があります。
以下、ネタばれしていますので、ご注意くださいませ。

レイの存在、そしてMの設定からして非日常、非現実的。
この辺りの雰囲気が、私の拙い文章力では表現しきれないのですが…。

レイの母親は、父の裏切りによってノイローゼになり、レイを産んですぐに自殺、レイは母の弟である茉莉亜によって育てられています。
レイと茉莉亜は、何も知らない父親・沢垣に復讐するため裕を取り込むことに。
駒の一人であった裕ですが、徐々にレイに惹かれ、二人は精神的に通じ合っていく。
しかし、復讐は実行されます。
沢垣は裕を見た瞬間から惹かれ、次第にそれは「自分の息子ではないか?」という疑惑に。(沢垣は息子の存在自体を知らない)
レイと茉莉亜によって仕組まれたシナリオによって、沢垣は我を忘れ、裕に執着してゆき、ついに罠に落ちる。
裕への執着は憎しみへ。
沢垣は裕を刺してしまう。
本当は息子ではない裕を殺してしまった。
沢垣を殺人へと追い込む、レイと茉莉亜の復讐は成功したのだ。
しかし。
その身体は裕ではなくレイだった…。

「誰もが、自分を正しいと思ってる。愛してる、愛してた、そういって自分を正当化する。」
「誰でも自分のしたいことをすればいいのさ。理由も正しさも、必要じゃない」
レイの目的は、父親への復讐ではない。
「充足は、求め続ける心の中にある。」
求め続けたモノが手に入ったとき、レイの目的も、生きていく意味も終わりを迎えることに…。

裕は歩いた。
涙は出なかった。そのかわり、歩き続けた。
朝までに探そう、と思った。何か、祝福の言葉を。


この最後の言葉に、静かに感動しました。
JUNEは悲劇的な結末(あるいは、死による昇華?)であることが多々あります。
この作品もそのパターンなのですが、何とも言えないこの読後感が、他の作品と違うところでしょうか。
人間の愚かさを知りつつ、憎しみをも越えたレイの渇望。
そして死によってそれを得ることができた、というならこれはある意味ハッピーエンド。
裕とレイのプラトニックな関係が、とてもいい感じで絡みます。

三田先生の作品は、肉体的な絡みはあまりありません。
この作品もないに等しい。
その分、精神的な絡みが多いといったかんじでしょうか

短編なのに、この内容の濃さ。
静かだが熱い人間ドラマが展開されます。
読んだのは10数年前ですが、衝撃を受けた記憶があります。
「鼓ヶ淵」も再読しなければ!
2006.05.18 10:29 | 三田菱子 | trackback(0) | comment(6)
            

懐かしいタイトルを久しぶりに見かけました。最も私が読んだのはさすがに二桁の昔ではありませんけれども...
昨年ひょっこり読み返して、いのまたさんのイラストがビアズレーをずいぶん意識されたものだとようやく気がついたんですよね。あれはずいぶんと驚きました。確かにあの退廃的な雰囲気...レイの意図した結末へ向かうには確かにあの古典的雰囲気が似合っていると感じました。

昨今のBLだとおそらくあの結末では許されなかったのではないでしょうか。それもまた時代なのでしょうけれど・・・。憂うべきとは申しませんが。

2006.05.19 11:50 URL | 硝子 #SjaT3f8U [ 編集 ]

硝子さん、こんにちは。

ピアズレー、知識不足で知りませんでしたが、見てみると確かに影響受けてますね!
同時期の他の挿絵と違って、アールヌーボー調だなとは感じてましたが、ここからきていたのですね。納得。
確かに、古典的な雰囲気がはまってます。

>昨今のBLだとおそらくあの結末では許されなかったのではないでしょうか
そうですね。
JUNEは「死」が身近ですが、最近のBLではあまり受はよくないでしょうね。
武士道精神に近いですね、JUNEは。
BLもいいですが、古き良きJUNE路線も、細々でもいいので残っていって欲しいものです。

旧作へコメント頂くと、うれしいです!
コメントありがとうございました。

2006.05.19 13:37 URL | にゃんこ #fwkSvwQ6 [ 編集 ]

すごく雰囲気のあるお話しだなあと思いました。

レイと祐の関係も他にはない感じで純粋なようで、本当は危うい均衡で成り立っている感じがなんか悲しい…と思いました。

何か読んだばっかりなので上手く書けないです。 迷惑じゃないなら、またこの記事にコメントさせていただきたいです。


2010.02.10 07:35 URL | 沙来 #- [ 編集 ]

沙来さん、こんばんは!

最近のBLとはまた違った味がありますよね。
大好きな作品ですが、何度読んでもこの雰囲気を上手く言葉に出来なくてもどかしいです…(>_<)
短い話なのに読後感は何とも言えない重さがあって、切なくて、儚い。

迷惑だなんて、そんなことは全然ありません!
またいつでも是非どうぞ♪
コメントありがとうございました(^^)

2010.02.11 00:50 URL | にゃんこ #fwkSvwQ6 [ 編集 ]

にゃんこ さま。
はじめまして。突然、すみません。
探していたのです、「M」を。
もう20年くらい前になってしまうのでしょうか、小Jで読んだ記憶のままに淫靡で悲しく心が裂かれるような結末だったことくらいしか覚えていませんでした。黒いビルが舞台のあの話はなんだったか、と記憶をたどっても答えなど到底見つからず。
しかも、作者を森内景生と勘違いしていて、全く検索にも掛かりませんでした。
本当に感謝します。一度は文庫を処分しましたが、読みたくなって買い戻そうとしています。ありがとうございました。末永くサイトを続けてください。私のように古い記憶を検索する方がいらっしゃると思うので。
では。感謝を込めて。

2011.11.24 20:28 URL | #- [ 編集 ]

咲さん、こんばんは!

少ない小遣いを工面して買っていた事もあり、昔の所謂JUNE的な作品は何度も何度も読み返していて、思い入れも強いので手放すことが出来ずずっと手元にあります。
私はこの作品が文庫で出ていた頃に一度嵌まり、その後長いブランクを挟んで今のBLを読んでいます。
なのでJUNE云々、BL云々を語るには知識が足りないとは思いますが、ブログを通して、こうして大好きな作品に対する思いに触れることができ、私自身とても嬉しく思います!

コメントありがとうございました!とても励みになります。
また昔の作品を読み返し、感想を書きたいという気持ちが沸いてきました。
またぜひいらしてください。

2011.11.25 03:02 URL | にゃんこ #fwkSvwQ6 [ 編集 ]













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